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エネルギー問題というのは、エネルギーの枯渇というよりエントロピーの増大のことだ。

 ~以下、『熱学思想の史的展開-熱とエントロピー』の著者・山本義隆さんに聞く<朝日ジャーナル(87.3.6号)>より~

        注:・・・・・は省略部分。インタビュー記事文を読み下し文に書き改めています。太字は引用者が強調のためにそうしました。

 ・・・・・アリストテレスの世界像は、二元論で日常の知覚世界をそのまま論理化したものでした。つまり月を始めとする天上は、始まりも終わりもない永続的・周期的な円運動の世界であるのに、地上は摩擦や空気抵抗をさけることができない生成と消滅の世界です。

 これに対してガリレイ、デカルトは、自然物体を幾何学的形状と運動能力のみを持つものとして均質化し、自然の定量化に成功しました。そのさい摩擦や空気抵抗を、数学的法則をおおいかくす副次的攬乱要因とみなし、それらを捨象した極限状態では物体の真の運動法則が明らかになると考え、地上も天上も一元的に把えたのです。

 運動の源泉は、世界の初めの神の一撃です。運動の減衰を無視するこれら機械論に対して、受動的で不活性な物質を始動させ、運動を持続させるための能動的な力という観念を導入したのがニュートンです。その担い手は、精気あるいはエーテルと呼ばれ、ニュートンの場合、神の意思を代行する精神的なものです。

 この究極の活動の担い手として、いくつもの理論が提唱されました。へールズの空気、ブールハーフェの火、フランクリンの電気流体、シュタールの燃素をへて、クレッグホン、ラボアジェの熱物質=熱素などです。今日では間違いとされて見捨てられているものですが、誤謬として片付けるには余りにも内容があります。これらは全地球規模で活動を始めた西欧近代社会が、自らの活動舞台であり生活環境でもある地球、特にその活動性の根拠を、理解しようとするものでした。今日の言葉でいえば、地質学、気象学、海洋学、陸水学をふくむ地球上の生命活動、物質循環全般を問題としていたのです・・・・・。

 そして産業革命。蒸気機関の発達に促されて、熱が生みだす仕事に原理的な制約があることをカルノーが指摘しました。熱が運動を生むには熱するだけではだめで、他方では冷やさないといけないし、すべての熱が仕事になるわけではない、と。これは、マイヤー、ジュールのエネルギー保存則と一見矛盾しています。

 これを止揚して熱力学を確立したのがクラウジウスとトムソンで、エネルギー保存則とともに熱力学第二法則、つまりクラウジウスのいうエントロピー増大の原理です。

 熱もエネルギーの一部ですが、熱を仕事に変換するとき、一部しか変換できず、多くが無駄になり、これは取り戻せません。それに、伝導や幅射によって温度差をなくする向きの非可逆的な熱の拡散がつねに起こり、熱の使い手が減ってゆきます。同様に物資を拡大してゆきます。この熱と物資の非可逆的な拡散(汚染)がエントロピー増大です。

 地球を熱機関とみれば、現在増大したエントロピーを地球外に捨ててエントロピー・バランスを保つ機構はしだいに作動しにくくなっています。エネルギー問題というのは、エネルギーの枯渇というよりむしろエントロピー増大なのです・・・・・。

                                                   (阿修羅 操)

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