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〈帝国〉・マルチチュード・コモンウェルス   

(1)アントニオ・ネグリ<ネグリ氏日本初講演(13.4.6)  プロフィール.pdf>とマイケル・ハートが生み出した概念  ネグリ関連の文献集(リンク)


(2)
語句説明.pdf  書評「〈帝国〉」.pdf  書評「コモンウェルス」.pdf  紹介記事.pdf  書評「マルチチュード -〈帝国〉時代の戦争と民主主義」      


(3)ネグリ氏の民主主義観.pdf

(4)ネグリが記者からのインタビューに答えて説明 
(記):記者  ・・・・・:中略


 「大欧州」があえいでいる。政府の債務危機が広がり、欧州連合(EU)主導の緊縮政策に人々の不満は高まるばかりだ。欧州は、世界は、この危機を克服することができるだろうか(記)。

 ・・・・・この危機から脱したとしても、そのときにはすべてが、あらゆるレベルで縮小してしまっているでしょう。なかでも懸念するのは、民主的な権利、とりわけ労働者の権利が縮小されることです。ストライキ権が制限され、福利厚生が削減され、労働時間が長くなり、男女の雇用格差が広がる。非正規雇用など不安定な労働形態はさらに横行するでしょう。50年、いや100年、逆行してしまうかもしれません。・・・・・すでに貧困が広がっていることがその予兆です。イタリアでも、ミラノやローマなどの大都市郊外や南イタリアに行くと、貧しさを肌で感じることができます。フランスの郊外でも同様です。欧州全体が不安定な状態になっています。

――この流れを止めるには(記)。

 ・・・・・もし新たな流れがあるとしたら、・・・・・民主主義の領域においてのみ、ありうるでしょう。様々な領域のコントロール(管理、統制)に多数の人々が直接参加する「新しい民主主義」です。

 ・・・・・いまの民主主義のやり方を根本から改革するかどうかです。労働、生産、金融、そして富の再配分を、多数の人が参加して、共にコントロールしていく。その仕組みを作っていくことです。

 ・・・・・政府という統治組織には、人々の「参加」の度合いが足りません。いま、各国の政府が危機に陥っているのは、もはや政府が社会を代表するものとは言えなくなってしまったためです。国民全員で一つの政権を選び、その政権が政治的な方向を打ち出し、みんながそれについていく、そういう従来型の政治が十分に機能しなくなった、それが現在の民主主義の姿なのです。多くの国で立法府と行政府がにらみあったまま動けない状況が見られますね。大統領に権限を集中しているはずの米国ですら、そうです。

――日本もまさにその状態です(記)。

 私には、代議制や三権分立など、18世紀に生まれた民主主義のしくみが腐ってしまったように見えます。腐ったといっても汚職のことではありません。機能できなくなったのです。全般的な見直しが求められています。これは不可欠です。

――では、どういうシステムを考えていますか(記)。

 ・・・・・すでに世界各地で始まっています。ニューヨークの「ウォール街占拠」運動や、スペインの「怒れる者たち」の運動、あるいは北アフリカの「アラブの春」などを見ながら考えるわけです。誰かが設計したらできるというものではありません。私が言う「新しい民主主義」とは、世界の生きた経験の積み重ねの中から生まれてくるのです。ラテンアメリカで90年代半ばから活発化した新たな社会運動も参考になります。例えば、ブラジルの「土地なし農民運動」(MST)は、貧しい農民たちが遊休地を占拠し買い上げを国に求めた。土地所有の変革を進める大規模な運動です。政府はこれを受け入れ、彼らと開かれた関係を作り、地域の潜在的な力を引き出しました。政府が運動を抑圧しなかったことに注目してください。運動を開放したことで、新しいモデルやシステムを生み出したのです。これが大事です。大恐慌のあと、米国のルーズベルト大統領が労働者の権利保護を進めたように。

――世界で起きている新しい動きを「マルチチュード」と呼びました。いま挙げた彼らのことですか(記)。

 そうです。単なる大衆や群衆ではありません。独自性を持った自立的な個人の集まりであり、それが1つになったものです。独自性が大事です。不安定かもしれませんが、可動性にも柔軟性にも富んだ存在です。

 「ウォール街占拠」は、その意味でも、マルチチュードを代表する運動です。彼らは何をすべきか、わかり始めている。考えや意思を伝える力を持っている。これこそ真の意味での政治だと私は見ています。

――「真の意味での政治」とは、具体的にどういうものですか(記)。

 たとえば「怒れる者たち」はデモや集会ではなく、キャンプを張って生活のあり方を含むあらゆることを共同討議しています。

 あるいは病院の運営で説明しましょうか。単に治療や研究の場としてだけではなく、患者との人間関係、愛情、社会とのつながりなど、もっと人間的な病院を組織するにはどうすれぱいいか。生活全般から考えるのです。これを政治に置き換えれば、新しい民主主義のモデルを考えていくことができるでしょう。

――どうやって生み出していけばいいのでしょう(記)。

 ・・・・・それぞれの人が、それぞれのやり方で表現し、動いていく。それがやがてマルチチュードを生み出していきます。先ほど述べた、世界の運動を見てください。様々な個人のまとまりによって形成されているのがわかるでしょう。今こそ広大な領域に及ぶ、新しい民主主義を考える時期です。20万人、30万人の規模で「自分たち」を組織し、自分たちで自分たちを直接、統治する(引用者: 「大事なことは皆で決めよう!」そういう時に来ています。まず、現状に対して「ノー」ということから始めたらどうでしょう。「ノー」ということこそ、最初にすべき、倫理的な行動です。

――国際通貨基金(IMF)や世界貿易機関(WTO)、国際的な法律事務所などがネットワーク状につながった、グローバルな秩序や権力として〈帝国〉を提示しました。それに対抗するのがマルチチュードです。この考えは今も有効ですか(記)。

 今も有効だと思っています。

 ・・・・・〈帝国〉は、90年代以降の世界で生まれるグローバルな秩序を示そうという試みでした。

 ・・・・・ただし、〈帝国〉とは米国のことではありません。市場がグローバル化していくなかで、秩序、とりわけ民主的な秩序が形成されない。私たちの関心は、このような、世界で生まれるグローバルな秩序や権力とは何かを追求することでした。それを〈帝国〉と名付け、対抗する世界の人々の新しい動きをマルチチュードと呼んだのです。(ブッシュ時代の)米国は、こうしたグローバル市場に自国中心の一方的な秩序を形成しようと試みました。ところがアフガン戦争やイラク戦争を仕掛けたおかげで、失敗してしまう。今から見れば壊滅的な試みでした。

 ・・・・・今後、もし世界のどこかで新しい民主主義の革命が起きるとしたら、それは米国から始まると思っています。なぜなら革命とは、資本主義の発展が最高レベルに達した場所で起こるものだと確信していますから。マルクス自身も、当時最も進んでいた国で起きると思っていました。

 ・・・・・ニューヨークの運動は、オバマ大統領を支持するものではありません。自律的な運動で、人々がアイデアを広げていく、まさにマルチチュードを代表するような運動です。マルチチュードはイランにも、チュニジアにも、イギリスにもあります。日本もこうした流れの中にあることは明らかです。確信しているのは、大草原に火を放つような、そういう「火」が、世界の各地に存在しているということです。ヨーロッパでは危機が存在し、そこからどうやって脱するか、誰もが思い悩んでいます。今こそこれが「起こりうる」と思いますね。今の日本のみなさんのように深刻な危機に身をもって直面している時こそ、何が本当の民主主義なのか実感できるはずです。そしてそこから、新しい民主主義のかたちが生まれるのでしょう。

~新しい民主主義へ<アントニオ・ネグリへのインタビュー>(朝日新聞<12(H24).1.4>)〔全文〕より~

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